魔法の禁止

Prohibition of Magic

万能でないとはいえ、極めれば核エネルギーさえ制御する魔術が強大な力であることに変わりはありません。魔法と科学が共に発展した近代、大戦において魔術は世界中に甚大な被害を及ぼしました。

ようやく国際社会や世界平和を意識し始めた人類は、その反省から魔法と呪文使用者を自分たちで管理しようと考えました。そこで制定されたのが現代から約150年前の「民間伝授禁止条約」、つまり「勝手に魔法を人に教えちゃいけないよ」という条約です。

以降、魔術師系魔法は各国政府が、僧侶系魔法は聖導庁が管理するようになりました。この物語の舞台となる国では、魔術師系魔法を習得できる者は科学魔法庁の国家公務員に限られています。

また同時に、無許可で魔法を使用することも大半の国で禁止されています。僧侶でさえ、持続性のある魔法を往来で使用するには特殊警邏(ら)印と呼ばれる目印をつけていなければなりません。

しかし一般普及を禁止された現代でも、非合法に魔法を習得する者は存在しています。また、正規に習得しておきながら、その身分を剥奪されたまま姿を消した者なども、わずかながら存在しています。そのような隠れ呪文使用者は見つかれば(犯罪などへの関与がなければ)強制的に国家公務員、または聖職者に永久就職させられます。

現代では、一般人が往来で魔法を目にすることはほとんどありません。多くの人々にとって魔法とは「なんだかスゴくてカッコいいけど、自分には難しくて面倒くさいもの」という感覚なのです。